【婚活知恵袋】ちょっと気取って

丸谷才一『文章読本』に「ちょっと気取って書け」という一章がありました。文学的な文章にはある種の気取りが必要だと説く箇所ですが、ふとこれを思い出したのには、もちろん理由があります。

お見合いや交際が不調に終わったとき、原因を探っていくと、「正直すぎること」に行き当たることがあります。この正直な人たちは、見栄を張って背伸びしてしまう種類の人たちとは正反対に、うわべを飾ることなくありのままを語ってしまいます。ウソを言いたくないから、とか、どうせ結婚すれば分かることだから、といった理由で、自分のネガティヴな要素を隠すことなく披露してしまいます。

具体的には、抱えている病気を列挙したり、経済的な困難を切々と訴えたりすることで、前者は男性が、後者は女性がやりがちです。また、中高年の方ほどその傾向が強くなります。その結果、「病気の話ばっかりでうんざり」とか「お金に困っているのは分かるけど……」といった不満の声が聞かれることになります。

カウンセラーとしては、もう少しオブラートに包んで言うなり、じっくり時間をかけて相手が受け止められるくらいになってから伝えるなりしましょう、とアドバイスしますが、なかなか耳を貸してもらえません。それができないほど不器用というわけでもないのに、性急な直球勝負を仕掛けるばかりで、交際が長続きしない正直者の会員に、歯がゆい思いをすることしばしばです。

あえて厳しい言い方をすれば、ありのままの自分を見てほしい、というのは、「甘え」かもしれません。こんな自分を受け入れるだけの覚悟はあるか、という、なかば居直りのような響きもあります。結婚したからといって、何もかもがオープンになるわけでもなければ、礼節や遠慮が不要になるわけでもありません。お互いに体裁を繕うのが普通で、一定の距離を置くことが求められます。

婚活において必要なのは、正直すぎる吐露よりも、相手を意識した体裁です。丸谷才一風に言えば「ちょっと気取ってふるまえ」とアドバイスしたいところです。