先日、『最高の組み合わせ/ユダヤ教徒の結婚事情』というドキュメンタリー番組を見ました。イスラエルの厳格なユダヤ教徒(正統派といわれる宗派)のお見合いを取材した番組で、「お見合い」や「仲人」といった制度が異国で浸透していることに、まずは目を奪われます。そうした制度は日本特有のものだと思い込んでいました。
番組に登場するお見合いシステムは、日本でもなじみのものでした。女性仲人たちは1ヶ月に一度ミーティングを行ない、手持ちの会員リストを交換して、お見合いを作ります。会員は成婚した際に1000ドル支払います。先月の分類(婚活知恵袋「結婚相談所の選び方」6/25)でいうと、まさに【C】の形態です。
そんな女性仲人のもとにやってきたのは、離婚歴のあるメラヴという大学院生(女性・25歳)。相手には初婚の男性を望むか、再婚の男性でもいいか、子どもがいてもいいか、といったことを尋ねられるうち、こんなやり取りになります。
「他に何か特別な条件は?」
「知的な東欧系ユダヤ人」
「いいですか。条件を5つも出す女性がいますが、全部を一人の男性がかなえるのは無理なんです」
彼女たちの調子はなかば冗談めいたものでしたが、仲人の苦労は万国共通のようです。
正統派ユダヤ教徒のあいだでは、宗教的な理由からか、若くして結婚を決めたがる傾向があります。アリエル(男性・19歳)とエスティ(女性・18歳)は、2回目のデートで、もう結婚後の生活について話し合っています。
「食肉解体の戒律を学ぶ。神の思し召しがあれば、資格が手に入れられるからね」
「がんばって」
「子どもの教育はどうする?」
「正統派の教育をすることが大切だわ」
「僕らがそうだったように、テレビも映画もインターネットも無しだね」
「子どもの教育についてたくさん勉強しないと」
「神の教えがある」
「神に祈れば、正しい方向へ導いてくださると信じている」
アリエルは「神のお恵みで僕たちの距離が縮まったようだ」とエスティに語りかけ、二人は満足げに帰路につきます。それぞれの実家では、相手とその家族に対する話題で持ちきりとなります。両家とも前向きですが、男性側の家族がやや慎重にことを進めたがるのに対し、女性側の家族(とくに母親)は性急に結婚の決断を娘に迫ります。エスティの母親に言わせると、結婚するか否かの決断は3回以内のデートで決めるべきであり、半年もデートを続けることは「恥」なのだそうです。
イエヘズケルという写本筆写者(男性・23歳)は、そうした結婚のあり方に懐疑的です。相手のことをよくわからないまま、周囲に促されるようにして結婚するのは避けたい、と主張します。その結果、1〜2回のお見合いと数回のデートで結婚を決める人もいれば、イエヘズケルのように19歳から数え切れないほどお見合いを重ねる人もいる、ということになります。
もっとも、このイエヘズケルの言動には一貫性がありません。恋愛感情によってではなく理知によって相手を見つめるべきだ、とか、外見にとらわれず人柄を見極めることが大事、といったご高説を述べるわりに、仲人には「(お見合い相手は)美人だった」とうれしそうに報告するのです。
なにはともあれ、ユダヤ人と日本人では民族性はぜんぜん違うのに、同じシステムが普及し機能している、というところが面白いですね。マッチ・メーキングの原動力には、なにか普遍的なものがあるのでしょうか。
気になる4人のその後ですが、情熱的にお見合い相手を口説いていたイエヘズケルは断られ、メラヴはいったんお見合いを諦めて学業に専念することにし、アリエルとエスティは幸せな結婚生活に手に入れた、とのこと。多様な婚活を見ることができるドキュメンタリー番組でした。