マリアージュ

フランス語で結婚を意味する「マリアージュ」(mariage)ですが、一般的には、食べ合わせの妙、とくにワインと料理の相性を意味します。ソムリエや料理人は、単体で美味しいワインや料理を提供するだけではダメで、相性のいい組み合わせを見つけなければなりません。

では、ワインが(他のお酒とくらべて)ことさらに料理との相性を云々されるのはなぜでしょうか。1+1が3にも4にもなるような絶妙な組み合わせがあるから、と多くの人は答えるでしょう。経験則からすると、ワインと料理は基本的に相性が悪いから、と答えたくなりますが、それが言い過ぎなら、合わせるのが難しいから、と答えましょう。難しいからこそなんとかして合わせようとするのです。

カゼミチでは、成婚されたカップルの写真やコメントを載せた成婚アルバムを用意しています。この成婚アルバムを眺めていると、いわゆる「似たもの同士」が多いことに気づきます。しかし、それだけではありません。似てはいないけれどしっくりくるカップル、と表現するしかないカップルもまた多く見られます。これはどう説明したらいいのだろう、と思いながらそのままにしていましたが、最近読んだ本にこんな一節がありました。

「私にとっては、ワインをどう合わせるかと考えると、補助的な、あるいは類似した味わいに基礎を置くんだ。互いに支え合う二人、似ている二人なら結婚させられるからね。太った人に痩せた人、あるいは似たもの夫婦って感じだね」(『ワインの真実』ジョナサン・ノシター、2014)

このレストランシェフのセリフに、はたと手を打ちました。似たもの同士ではないけれどしっくりくるカップル、これは補完し合うカップルと言うべきでしたね。互いの足りないところを補える、あるいは、互いの至らないところを許容できる、そんなカップルです。

カゼミチでは最近、ふた組の成婚カップルが誕生しました。一方は「支え合う二人」、他方は「似ている二人」です。どちらも相性のよさが伝わってくるカップルでした。もちろん、こうした傾向から演繹的にマッチングしてもうまくいくとはかぎりませんが、そこにこそカウンセラーの苦労とやりがいがあります。

ソムリエや料理人が自分の仕事を結婚になぞらえたのは、うなずけるところですね。もっとも、離婚率の高いフランスでは「マリアージュ」とはあまり言わず、「アルモニ」(harmonie、調和)という言葉を使うそうですが・・・。